公益社団法人関西二期会（公式ホームページ）

合唱指揮：袖岡 浩平

まさに、満身創痍の中で取り組んだ「オテッロ」でした。
関西二期会の初めてのレパートリーとなる「オテッロ」の公演計画は3年前に大きな覚悟を持って決定されました。ヴェルディの作品の中でも特別な意味合いを持つ「オテッロ」を果敢にも取り上げたのは、歌手のレベルが充実し、イタリアとの連携も順調で、関西二期会がさらにステップアップするための条件が揃い、期は熟したと判断したからです。イタリアからの指揮者、演出家との話し合いも順調に進み、キャストも決定し、さあ、これから！と期待と共に気を引き締め進みだしたところへの世界中を覆ったコロナの感染拡大でした。やむをえない事情からの主要歌手の変更なども含め、状況は二転三転しながら、最終的に指揮者、演出家の来日が不可能との決定がされた時は、すでに公演まで2か月を切っていました。急遽指揮者の変更、演出家の演出ノートをもとに稽古が始まりましたが、公演自体開催できるのか？そしてコロナ禍の中で制限の多い練習への不安を抱えながら、皆必死で前を向いて歌い進めて参りました。しかし、本番も予期せぬアクシデントに見舞われ、2日目は3幕4幕の歌唱の一部を急遽、松本薫平氏がカヴァーを致しました（舞台上の演技は本役が務めました）。お客様に最後まで「オテッロ」の舞台と音楽をお届けするために、これがその時点でできうる限りの方策でした。結果、異例の舞台とはなりましたが、お客様には理解を承り公演は無事終了することができました。また、コロナ禍のため、少数精鋭で臨んだ合唱は幕開きから最後まで素晴らしい迫力と緊迫感のほとばしる音楽で、舞台そのものを引っ張って下さったことを特筆させていただきます。予想不可能な状況下で、歌手、スタッフとも、それぞれが必死の思いで取り組み公演を守り通しました。これらを貴重な経験として今後に活かし、のちに「オテッロ」公演を振り返ることができるようにならなければと思います。

公演監督　副理事長　斉藤言子