本文へ移動

理事長ご挨拶

ごあいさつ

公益社団法人「関西二期会」は1964年東京オリンピックの年に関西在住の声楽家たちにより、東京二期会の「関西支部」として発足し、爾来50数年、オペラ公演を中心に歌曲の夕べ等々のコンサートを開催し活動して参りました。その後の日本の高度経済成長とともに黎明期を経て発展し、今では500名を優に越す組織となりました。その間、任意団体から一般社団法人へ、そして公益社団法人となり関西を拠点とする代表的なオペラ団体へと成長いたしました。
現在、大阪市内に事務所を構え関西の音楽芸術の発展に寄与すべく活動しております。近畿圏にはオペラ公演に適した劇場(びわ湖ホール、兵庫県芸術文化センター大ホール、尼崎アルカイックホール、吹田メイシアター、新たに新設されたフェーニーチェ堺、東大阪市文化創造館)といくつかありますが、すべて他県と大阪府下にあり、大阪市内にはまだオペラ公演に適した公立の劇場はなく、まさにドーナツ化現象を呈しています。本来ならば大阪市内に芸術文化の中心拠点となる劇場があってこその大阪だと、常々思っているところではあります。
先の第二次世界大戦で廃墟となったオーストリアの首都ウィーンでは戦後の復興の際、市民たちは住居、食料の不足にもかかわらず、まずオペラハウスの再興を強く願ったそうです。その願いがかない、再建された国立オペラ劇場の杮落しではベートーヴェンの「フィデリオ」が上演されました。劇場に入れない多くの市民も街頭スピーカーで聴くことができ、政治犯が解放される終幕の合唱の時には、こぞって涙を流し自分たちのアイデンティティーを再確認し、これで本当の戦後復興ができると思ったそうです。ウィーン市民にとって人間が人間らしく生きていくのにオペラは希望そのものでした。オペラが敗戦で打ちひしがれた人々をこれほどまでに力づけるものなのかと、若かりし頃の私は感動いたしました。
歴史、伝統の異なる日本では、一般市民がオペラを求め、日常的に楽しめるようになるにはまだまだ年月がかかることでしょう。しかし本物のオペラの魅力を多くの方々に提供し共有することは今後とも大切です。将来にわたって「良いものは良いのだ」という信念を持ちつつ、多くの方々に受け入れられる公演活動を続け、関西におけるオペラの歴史を着実に積み重ねることが責務だと思っているところです。
 
公益社団法人 関西二期会
理事長 米田哲二
TOPへ戻る